銭湯

以前は行きたいと思わなかった、銭湯にちょこちょこ行くようになった。
前のわたしは人と一緒にお風呂に入るなんて…!と、恥ずかしさもあり、お風呂の時間自体を自分だけのプライベートなものと思っていた。
だから肩までたっぷりのお湯に浸かる贅沢さを知らなかったし、会話がなくても何だかオープンな気持ちになる、この感覚も未経験だった。


初めは友だちが銭湯の話をしていて良いなあと思ったことがきっかけだった気がするけれど、そうこうしているうちにわたしにとっても深刻な問題が出始めた。
今の仕事を始めて、パソコンに向かう時間が長くなり肩が凝り始めたのだ。
パソコンを使って肩が凝るなんて昔はよくわからなかったのに、仕事を始めるとすぐだった。
視神経にも疲れが出始めたなあと実感し、リフレッシュを求めて銭湯に気持ちが向いたのだ。


初めて行ったときはやはり、人がいる中でハダカになり、身体を洗って湯船でくつろぐという動作一連に緊張があった。何も隠さず堂々と歩いている先輩方にドキドキしたりもした。
でも、3回も行けば周りなど気にならなくなる。
プロポーションなんて関係ない。どこをどう洗うかも自分の好きでいい。
誰も見てやしないのだから、自分のペースで自分の好きに、銭湯での時間を過ごせばいい。


そう気づいてからは、たまの癒しのために銭湯でくつろぐ。
特別な効能のある温泉でなくても、たっぷりのお湯に浸かれば不思議と身体がリセットされる。
常連のおばちゃんたちの会話を横で聞きながら、わたし自身は誰とも話さなくても和やかな気持ちになる。