ザ・シークレットマン/ペンタゴン・ペーパーズ

二本立ての名画座にて、『ザ・シークレットマン』『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』を観てきました。


どちらもベトナム戦争の時期のアメリカが舞台。

かの有名なウォーターゲート事件に、違った切り口から繋がる二作。一緒に観てよかった。

二本立てって、組み合わせ方のストーリー性も含めて良い!ってときには興奮が二乗になる感じ。


以下、観た順


『ザ・シークレットマン』

ウォーターゲート事件でワシントン・ポスト紙の記者に内部告発をした「ディープ・スロート」こと、当時のFBI副長官マーク・フェルトが主人公。

2008年に亡くなったフェルト氏は、死の3年前に自身が「ディープ・スロート」だったことを明かしたそう。

この事件を記者側から描いた『大統領の陰謀』を学生時代に観たのですが、こちらが公開された1976年にはまだ真相は明かされていないんですね。だから地下駐車場で情報を渡す彼は顔の見えない黒い影のように描かれている。

一転、本作での彼はとても人間的で。FBIに30年、忠誠を誓ってきた組織人でありながら、独立組織であるはずのFBIにかかる圧力に揉まれ、告発に踏み切る。ベトナム戦争反対の世論が吹き荒れる中で、ニクソン大統領の退任にまで繋げたのだから、まさに「史上最大の告発者」。

冒頭ではエリート高官の印象が強かったけれど、次第に信念の通った顔つきに変わって見えてくる。うわぁ、格好良い…!という感情が、ラストに向けてジワジワと高まってどすんとくる感じでした。



『ペンタゴン・ペーパーズ』

ホントはこっち目当てで足を運んだんだけれど、1本目が思わぬ伏兵となって結構ぐったりの状態で観始め。でもこちらも期待に違わず良かった!

時代はウォーターゲート事件より前の1971年。泥沼化するベトナム戦争の現場から話が始まります。

ベトナム戦争に関して報道されている部分とそうでない膨大な取引や発言。後者について仔細に記録した「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をNYタイムズがスクープし、物語がはじまる。

主人公となる「ワシントン・ポスト」の経営者である女性と編集主幹の男性は、タイムズに抜かれた敗北から、この文書を巡る渦中の人となっていきます。

新聞社の経営と編集って立場が違うから対立の構図で描かれがち。でも本作では考え方の違いがありながらも、もっと大きな目的にむかって最終的には解りあうのが面白い。

そして何より、緻密な取材を重ねる現場の記者たちが格好良い!タイプライターをカタカタという音、ざわざわとした編集局の雰囲気が小気味よく、生き生きとしているのです。

色々な人の努力や思い、決断が詰まった紙面。輪転機が回って、新聞がザーっと出来上がる様は、見ていてとても気持ち良い。

ガサガサ、ペラペラと音をさせながら、紙の新聞を読みたくなる一本でした。